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03-6205-41142019年6月24日
混合歯列期の小児矯正治療は、しなくて良いのでは?ということについて、矯正歯科認定医である私の意見を書きます。
私が学んだボストン大学矯正科では、いわゆる小児矯正(6~10歳程度)、日本ではⅠ期治療と言うものは行っていませんでした。最後の乳歯がプラプラで抜けそうになりそうなお子様が一番早いスタート時期でした。ですので私が、乳歯が多く残っているお子様の治療を初めて行ったのは日本に帰国してからでした。
どうして40年以上に渡ってボストン大学矯正科の教授だった、敬愛するDr.Gianellyは小児矯正を行わなかったのか?
それは全て彼の読んできた膨大な論文からによるものだと私は思います。彼は優しく、教育熱心で、歩く論文集のような人でした。私が何か質問すると、論文のコーナーに連れて行かれ、その中から1冊取り出し、ページ数も覚えていて、表や結論などを基に私の質問に答えてくださいました。きちんとしたエビデンス(根拠)に基づいて私たちに教え、治療を導いて下さいました。
残念ながら私が卒業した数年後、Dr.G.(いつもこう呼んでいました)は急逝されてしまったので、今は私がいくつか推測を書くしかないのですが、私があまり小さいお子様の治療をお勧めしない理由を書きます。
まずは成長発育が残っている、そしてそれはどうなるか、どう成長していくか、予測は不可能ということ。
下顎の成長は、背が伸びる第二次性徴期に起こります。また彼は、下顎を前に出す装置などを否定する論文もいくつか紹介して下さいました。これは下顎を前に出しているのではなく下の前歯を前に傾けているだけだと。
全ての装置がそうとは言えないと思われますが、そういう装置も多くあることを知りました。小児の頃に成長予測が出来ない現代で、下顎を大きくしたり、前に出したりしても、もしかしたら中学生くらいに成長するかもしれないのです。
私の患者さんにも下の前歯がガタガタの女の子がいました。私は保護者の方に「今ここだけ治しても、まだ乳歯がたくさんあって、八重歯になってはえてくるかもしれませんし、咬み合わせもあまり良くないので永久歯になってからはじめた方がいいと思います。」と、告げ永久歯が生えそろうのを待っていました。
抜歯治療を予測していたのですが、永久歯列になった彼女は前歯のガタガタも治り咬み合わせもほぼ正常で、歯並びもよく、矯正はいらないかなという状態で、結局矯正治療はしませんでした。こういうこともあるのです。
またこれは私の意見ですが、7歳からⅠ期治療を始めたら、12歳臼歯が生えそろいⅡ期のワイヤー治療が終了するまでに何年かかるでしょう?その間に口の中に何らかの装置が入っている。虫歯のリスクも高まります。健康な歯を抜歯することになるのだけは避けたい方は、I期治療から始められた方がいいかもしれません。しかしI期治療を行っても必ず抜歯が必要でなくなるという保証はありません。
当院にも子供の頃 治療をしていたけど途中で嫌になってやめた、という成人の方がよくお越しになります。もちろん「今 始めないと大変なことになる」という骨格性の異常が疑われる方は、7~8歳から治療を始めないといけない時もあります。
また患者さんであるお子様本人が あまりやる気のない時は、私は治療には消極的です。お子様が「ここがイヤだし格好悪いからすぐ治したい」という時は、もちろんきちんと治療させて頂きます。
あと、一般の歯医者さん(矯正専門医ではない)などで、小児期に「今から始めないと治らないよ」
と言われたら、必ず矯正専門医にセカンドオピニオンを求めて下さい。
もしかしてその先生は、「今から始めないと将来健康的な歯を抜歯することになるかも?」という意味を込めて言われたのかもしれません。しかし抜歯をすればきれいに治る、特に出っ歯のお子様は抜歯も悪くないと思います(私も30歳まで出っ歯で4本抜歯して矯正しました)。
骨格的な異常が疑われる場合は「今始めないと治らない」ですが、それはセファロレントゲンという横顔の特殊なレントゲンを撮らないと分からないことです。矯正治療は歯だけならば全て自費診療ですから、易しそうな症例を治療する一般の歯医者さんがよくいらっしゃいます。全ての先生方がよくないとは全く思いません。
しかし何人もの8年小児矯正をやっていたけど治らないと言われた、とか5年やっていたけど全く治らない、とか成人の方でも4年近くワイヤー矯正をしていて、次回外すと言われたのだけどなんだか咬めてる気がしない、などちょっとひどい歯医者さんがいるのも現実です。
先にも述べましたが私は30歳で4本抜歯して2年と1ヶ月ワイヤー矯正をボストン大学のDr.Blauにして頂きました。あれから16年、今も歯並び・噛み合わせに何の問題もありません。
また、私が行ったワイヤー矯正で最高齢の方は75歳の男性、インビザラインは73歳の女性です。歯としっかりした歯茎・骨があれば、矯正治療に年齢は関係ありません。
もちろんティーンエイジャーの頃に矯正治療を行うのが理想ですが、大人の方でも決して遅くはありません。高齢になると歯の残り本数と認知症、心臓病、糖尿病、肺炎などとの関連性が言われるようになりました。歯を無くす前に矯正で歯磨きしやすい、咬みあわせのいいお口を手に入れましょう。
こちらはあくまでも院長 長尾紀代子の私見です。
他の考えの素晴らしいドクターもおられますので、是非合う先生を見つけて下さい。
当院では、患者さんが抱えていらっしゃるお口のお悩みや疑問・不安などにお応えする機会を設けております。どんなことでも構いませんので、私たちにお話ししていただけたらと思います。
ご興味がある方は下記からお問い合わせください。